鹿乃NewAlbum「yuanfen」を聴いて。

初めまして。あすみんと申します。

 

タイトルの通り、鹿乃さんのNewAlbumである「yuanfen」という作品について

何か私なりに綴れることがあればと思いキーボードを執らせて頂きました

 

また以下の方々の記事にも触発されております。(参考)

 

鹿乃×田中秀和「yuanfen」全曲レビュー ~アニソンと同人音楽の交点~ - リーティアの隙あらば音楽語り

https://letia-musiclover.hatenablog.com/entry/2020/03/05/001851

 

鹿乃『yuanfen』というアルバムの素晴らしさを語りたい。 - 音楽は今日も息をする。 https://andy-music.hatenablog.com/entry/2020/03/07/231836

 

yuanfenについて - ど~でんのブログ https://dodensei.hatenablog.com/entry/2020/03/08/230707

 

鹿乃田中秀和『yuanfen』とめぐりあう縁

http://lichtung.hateblo.jp/entry/kano.tanakahidekazu.yuanfen.meguriau.yuanfen

 

鹿乃×MONACA 田中秀和、アルバム『yuanfen』対談 “死”と向き合い明確になった今伝えたいこと

https://realsound.jp/2020/03/post-517550.html

 

 

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鹿乃さんと言えば10年弱前ニコニコ動画でそのお名前はよく見ていました。

その彼女がいつしか、私が尊敬する田中秀和氏と化学反応を見せ、いくつかの楽曲が生み出される中で本アルバムの完成まで至った。クリエイター同士でもあるし私自身にとっても勝手ながら縁であると感じた次第です。

 

 以下楽曲に関してですが、敬称略とさせて頂き―――

全曲「作詞:鹿乃 作曲:田中秀和(MONACA)となります。

 

01.午前0時の無力な神様 編曲:Aire

午前0時の無力な神様

午前0時の無力な神様

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「今日が最低なら 明日は人生 最高のはじまりさbirthday」 (0:52~)

 

今が、ここからが0だとすれば何にだってなっていけるし、何でもやっていけるという

究極にポジティブに振った世界観。

愚かで醜い(おそらくその人自身の)人生…それを「愛おしいね」と思える。視点が宇宙を見守る意志のような何か果てしないものを感じます。

 

編曲は"最高のはじまり"を作り上げたAireさん。

曲中では意識的に好きな個所がたくさんあるけれど、無意識的に好き…というか凄いなぁという部分は0:37~右からミュートされたギターが下るフレーズとそれを追いかけるようなシロフォンの合いの手。小気味良く跳ねる音が好物です。

あと先程の「愛おしい"ね"」(0:49)や「最高のはじまりさbirth"day"」(1:01)の"最後の音"に代表されるVI♭の音がとても心地よい。

 

「踏み出した一歩はfuture 前途多難だ まだまだ見つかりそうもないanswer なんて素敵なんでしょう」(1:12~)…なんて底抜けに明るい。素敵だって思えることって素敵ですよね。

 

 

02. 編曲:Nor

光れ

光れ

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イントロのコード感。

急にVImがVIのアプローチをしてくると、私はふっと明るくなるような印象を受けます。

対照的にDメロの後もイントロのフレーズが登場しますが、こちらは部分転調が無く、リズムの変化もあり力強さをより感じます。

 

「正当ない自問自答 どれでも後悔しそう 後悔するならいっそ このまま朝までずっと」(1:37~)

何をやっても明確な答えが分からない時があって。

それでも、段々暗く見えなくなっても、忘れそうになっても、出来ない自分を認めた上で何かをしていかないと、手を伸ばしていかないと…きっと変わらないし光らない。

「光れ」という強い思いと、それをなんとか信じて進んで行く意思を感じました。

 

…中々グサっとくるので自分に言い聞かせないとなぁなんて思いながら、次へ行きます。・・・。

  

 

03.yours 編曲:田中秀和(MONACA)

yours

yours

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正直な事を申し上げると、本楽曲と「08.罰と罰」は、受け入れるのに何度か聴いていく必要がありました。

しかし。

^1 (一部抜粋)

鹿乃:私の歌も、音の一部として扱ってくださっても構わないので、ずっと聴いていられるような、カフェミュージックのようなものにしたい

(中略)

田中:あと、悪い意味ではないんですけど、ちょっと狂気も感じられるような雰囲気というか。音楽って「楽しい」以外のことも表現できるものだと思っているので、まずはそういう楽曲からつくっていきました。カフェミュージックって、僕の中では「日常に寄り添ってくれる音楽」「そばで寄り添ってくれる音楽」だと思っているんです。それなら、楽しいときだけではなくて、悲しいときも、怒っているときも、そばで寄り添ってくれる音楽がきっとあるはずで。「それって、こういうものなのかな?」と考えてつくったのが「yours」でした。

 だんだんと聴きなれていく最中、鹿乃さんと田中秀和さんのインタビュー記事を拝見して。

悔しくて悲しいものに寄り添って表現する。私はそこへの配慮が不足していたと気づきました。

 

ちなみに鹿乃さんの曲では「Linaria girl」が大変に好きで。 

Linaria Girl

Linaria Girl

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「ブラジルの音楽」の要素がどちらの曲にも取り入れられているんですね。

 

「yours」は日本語の歌詞で女の子の色んな恋の気持ちを、ブラジルミュージックで…時にはプログレッシヴでエモーショナルな音楽で奏でているので、凄い化学反応にリアルタイムで出会えたのだなあと。

(2:46~)の間奏終わり間際、ギターのドゥンドゥンドゥン…の余韻。堀崎翔さん。2拍3連。ありがとうございます。

 

あと曲構成が面白いですね。

「テーマ」 「Aメロ」「Bメロ」…!「テーマ」……

構成感は「05.聴いて」でも感じました。

 

あとこれは恐らく私の読み違いなのですが実は「あなた」が2人いて、途中で別の人を指すようになっている説が頭の中に出てきてしまったのですが、色んな推論の末、流石に「あなた」は一貫して同一人物であろうという結論になりましたので、何行も綴った苦しい推論には消えて頂きました…。

 

 

04.KILIG 編曲:ハヤシベトモノリ

KILIG

KILIG

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KILIG -キリグ-

^2 お腹の中で蝶が舞う気分。めまいがするほどドキドキすること。

^3 見るとめまいがしてしまうほど、ある人の事が大好き」という意味。
それと同時に「これ以上ないほど幸せ」という状態を指すことも。

 

 

スッと聴けてしまう曲だと感じたのですが、金管楽器セクションや時計の音、水滴が落ちる音…。

遊びはたくさんあって聴きごたえが抜群な、幸せにあふれた歌。

 

「そんな気分September」(0:35~) 「愛しあおうSeptember」(1:42~)スタッカート気味な語感とメロディの着地感が大変素敵です。

 

生まれ変わったら きっと元には戻れない 心の中 蝶がヒラリ 羽ばたき一つで廻った世界」(2:45~)

遠い遠い先を思う感情。恐怖にも似たような悲しくて怖いことを考えてしまうことがよくあります。

太字部分に向けてコード感もぐっと盛り上がって行くのが沁みますね…。

 

 

05.聴いて 編曲:田中秀和(MONACA)

聴いて

聴いて

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できればこの曲を、このアルバムを聴いてくれという私の気持ちに似ていて

それよりももっともっと"強い"意味で聴いてほしいという直球ソング。

 

「今日も音楽をしていたんだ あなたに聴いてほしい言葉を 日がな一日部屋にこもって 書いては消して また空白だ」(1:27~)

いつか田中秀和さんがどこかでお話されていたのですが、田中さんと一緒にお仕事をしていた音楽業界の先輩が「今日も音楽していきましょう」(うろ覚え)と呼び掛けていたとのことで、私は「音楽をする」という概念に改めて出会ってしまい、ちょっとした宇宙を彷徨いそうになりました。

 

曲中、定期的に長いフレーズを、様々な表情をつけた16分のスネアドラムが駆け抜けていく様がその後の展開へのきっかけになっていて。サビ前は爆発力で、サビ後は静かなAメロとの対比のようで。

 

「私が死んだあとのあなたが 一人にならようにずっと ずっと ずっと ずっと ずっと」(2:18~)

この曲にも遠い未来に対する思いが出てきます。この話はまた後で。

 

 

06.漫ろ雨 編曲:曽我淳一

漫ろ雨

漫ろ雨

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そぞろあめ。

 

イントロのI⇒I7のコードの流れって「雨の日に家の戸を開けて外に出たときの空気感」を思い出させるのだなあと、しとしと思ってました。不思議。

 

サビでは強めな歪みのあるギターが入るんですが、メロディの対旋律で呼応する口笛のようなシンセ音の存在感もあって、激しさと泣きの優しさが共存しているようで感情が揺さぶられます。

 

思い人に言葉を伝えるために、後ろの時系列から物語が始まっているのですが

天気の映り変わりによって曲にも変化が出てきます。

そう、最後は雲の隙間から太陽がでてきて晴れになっているんですが

ここ(アウトロ)でも恐らく同じコードのI⇒I7進行が使われてはいるものの、音の積み方を変えているためか、先に記載した「雨が降った‥ような感情」とは真逆で

「太陽が時折照らすような情景」を感じさせる音に感じるんです。

 

途中からキーが上がっていることも影響しているのだろうかと考えると、移り変わりはとても面白いものだなと思うのです。

 

 

07.おかえり 編曲:Oliver Good(MONACA)

おかえり

おかえり

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 田中秀和さんと同じMONACA所属のOliver Goodさんが編曲で参加しています。

 

あまり言及されている方がいないと思った部分があって…

Aメロの各フレーズ頭(0:17や0:31等)のコードがI/♭VIIとこれまた普通そうでそうでもないような…個人的にはかなり強烈な空気感でした。

I7の構成音であるI III V ♭VIIを入れ替えてI/♭VIIという形になっているとは思うのですが

曲全体を通して比較的に日常的な楽曲の中でこの響きの存在が異常で。

 

いや、I/♭VII ⇒ IV/VI ⇒ IV/♭VI ⇒ I/Vという流れをスムーズにするI/♭VIIではあるんですが、この非日常の存在が、時がきて「おかえり」を言ってくれるわんわんと鳴く彼がさよならと言ってしまうその時を最初から予感させてしまうそれなのであれば…楽しくも悲しいこの曲にとって大切な存在なんだなと思わざるを得なくなってしまうのです。

 

 

08.罰と罰 編曲:佐高稜平

罰と罰

罰と罰

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まくしたてるように早口で煽るように歌われていく楽曲。

まさかこんな歌い方で来るとは思わず。何度も聴いて咀嚼をしました。

ので。今はもう大丈夫。かかって来い。

 

とてもとてもな怒りを、暗めの狭いコード感で的確に凝縮させ

はっちゃけてしまいそうになるほどの感情をサビでクールに昇華する。

 

私はアウトロが凄く好きです。

詰まった和声でスタッカートに小気味良く奏でられるメロディ、小説の終わりオクターブでリフレインされる弦の細かい下降フレーズ、一回だけ登場するフルートのしゃくり、主音を提示するかのように鳴り響く水滴の音…嗚呼、甘美なり!!

 

そして改めて聴くと(2:20~)のDメロの不穏さから、(2:32~)のおしゃれなコード感への切り替え凄くカッコよくないですか?

佐高稜平さん。とてつもない楽曲を生み出して頂き感謝感激という思いです…。

 

 

09.エンディングノート 編曲:sugarbeans

エンディングノート

エンディングノート

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 不勉強だったのですが「死に備えて自身の希望を書き留めておくノート」がエンディングノートなのですね。

 

「ありがとう」という思いが出てきた鹿乃さんにありがとうと言いたい。

 

^4 鹿乃:今回のアルバムは、「今死んでも悔いの残らないような作品をつくりたい」という気持ちでつくりはじめた作品なので、そういう意味でも、もちろん遺書ではないんですけど、最後に「エンディングノート」を入れたいと思ったんです。楽曲の雰囲気を説明していただいたものにも、「もう終わりだけれどまだ終わりたくない」と書かれていたので、「テーマはこれしかない!」と思って。そこから、「エンディングノートということは、本当にみんなへの気持ちを書くものになるよなぁ。そのとき、自分はどんな歌を歌いたいだろう?」と考えていたら、シンプルに「ありがとう」と伝えたいという気持ちになりました。

(中略)

もちろん、これが本当に最後ではなくて、まだまだ活動していこうと思っているんですけど、ネットの中で生まれた「鹿乃」というキャラクターの終わりを想像して歌詞を書いてみました。

 

 「何度目かもわからな"い"」(1:16~)ここの「い」の音のどこにも行きつけなさそうな浮遊感すごく良い…。

田中さんがaikoさんの楽曲でお話していたことを思い出した。

^5 どうも眠れないので昔から大好きなaikoさんの「前ならえ。」という曲を延々と聴いてるんですが「ボロいスニーカー踏んでしまえ」の「え」の音が全音下がる部分があまりに用意周到な不用意というか誉むべき大いなる蛇足という感じでこれこそ彼女のメロディーメイカーとしての非凡さだよなあと改めて

 

さっき保留させてた話。皆さんは自分が死んでしまったはるか先のことを想像することはありますか?

 

きっと何も思考はできず、聴こえず

 

本当に下手をすればこの星は爆発してしまい

 

二度と生命が生まれない環境になる。

 

そして間違いなく、今生きている自分自身ではなくなる。

 

あるのは無だけ。

 

私はこれに凄く恐怖を覚えてしまいます。

 

 

私もまた色んな縁に巡り合い今を生きています。

死は壮大なものではなく、常に生に寄り添っているものなのかもしれないです。

 

今死んでしまっても悔いのない人生を送れましたか?

と言われても、今の私はなかなかどうして言葉が出なくなってしまいます。

 

 

最後に。 

「yuanfen」という作品に出会えて良かった。

ここまで読んでくださりありがとうございました。

このアルバムを聴いた方の思いの何かに少しでもキャッチできるものがあったとしたら幸いです。

では手短に、この辺でキーボードを置きますね。

 

 

脚注

^1,4 鹿乃×MONACA 田中秀和、アルバム『yuanfen』対談 “死”と向き合い明確になった今伝えたいこと https://realsound.jp/2020/03/post-517550_3.html

^2 KILIG[キリグ] http://special.scentnations.com/kilig/

^3 英単語一つで訳せない、ちょっと珍しいタガログ語4つをわかりやすく説明! ブログ | フィリピンプライマー https://primer.ph/blog/genre/tagalog-terms-with-no-english-translation/

^5 田中秀和/Hidekazu Tanaka https://twitter.com/MONACA_tanaka/status/666378286692368384